同窓会、そして、告白。

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「どうやったら、その歳でそこまで昇進できんの?」 「元々、仕事が特別出来るってわけじゃないから…仕事内容と相性が良かったのかな」 「仕事内容って…クレーム処理!?」  千晶は、質問の声をやや乱してしまった。 「うん。営業の頃から他の部のトチりとか代わりに謝る機会が多かったんだけど、謝ってるうち、何故か昇進してた」 「……」  千晶は現在、働きながらも新しい派遣先を探している。今の派遣先を辞めたい理由、それは、単純にクレーム対応をしたくないからだ。そもそも、千晶は謝るという事が人一倍嫌いな性格で、たまたま派遣されただけの、愛着も思い入れもない会社のミスを代わりに謝るということが、頭では分っていても根っこでは納得できない。それでも、それが社会の仕組みだと自分に思い込ませ、なんとか仕事をこなそうとするのだが、理不尽なクレーマーに対してはつい喧嘩腰になってしまう。  結果、責任者を出せということになり、最終的に上司にこっぴどく叱られることになる。最近はその繰り返しで、千晶は客の言いがかりと上司の叱責とで毎日うんざりしていた。千晶と同じ性分の人間は他にもいるらしく、職場では千晶が派遣されてからの半年間だけで、もう五人の仕事仲間が辞めている。千晶が客と頻繁にトラブルになっていてもクビにならないのは、他に働き手が見つからないからだろう。 「謝る仕事が向いてるって、凄いね」  千晶の口から先程の「凄い」より遥かに実感の篭った「凄い」が漏れた。 「変人だろ」 「いや、普通に凄いなって思う。私もクレーマーの相手してるけど、素直に謝罪するとかって気になれない」 「素直ってわけでもないんだけど。ただ、怒られるのが好きなんだよな」 「またまたぁ」  千晶が梶野の方を向くと、梶野は思いがけず真顔だった。 「いや、冗談じゃなくて好きなんだよ、怒られるの。なんか、怒られるとゾクゾクするんだよな」  千晶は判断に迷った。梶野は真顔で冗談を続けているのだろうか。それとも…。
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