おはよう、おデブさん

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 大学に通うため、人生初の独り暮らしを始めた日。  この部屋でおデブさんを発見したときは、憂鬱だった。  茉莉は仰向けじゃないと寝られない体質なので、どうしても顔を合わせなければいけない。 「なんでそんなに笑ってるの。  気になって寝られないんだけど。」  おデブさんは答えない。  人の寝顔をニコニコしながら眺めるなんて悪趣味な奴。  寝るときだけじゃない。  失敗した目玉焼きを食卓に並べているときも  スカートのホックが閉まらず落ち込んでいるときも  留年をかけたテストに備え徹夜で勉強しているときも  おデブさんは何も言わず上から見下ろしていた。  ただただ、ニコニコと。
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