夢でしか会えないあなた

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二人は心地良い風の吹く丘の上で並んで座っていた。周りの風景はぼやっとしていて、よく分からなかった。随分と長い時間話しをしていたが、正確な時間は分からないのだが、体感としては数日間は過ごしている感じだった。だが、男は疲れていないのだ。彼女も特に疲れた様子は見受けられなかった。それはこれが夢の中だからという事を彼に気付かせ、確信を持たせた。ゆえに時間の感覚も経過も正確に体感できない事を納得させ、受け入れさせた。そして男は彼女との会話がどこか噛み合っていない事に違和感を持っていた。男はその違和感が次第に気になり始めて、その事ばかり考えるようになっていた。そして男はついにその原因を探り始めたのだった。 「君は一体オレの何が気に入って夢の中にまで押しかけてきたんだ?」彼女は変わらぬ表情で答えた。 「私はあなたが今とても辛いと思って声をかけたの。あなたはそう、とても疲れた表情をしていたから…。」 「それは夢の中でかい?それとも現実でか?」彼女は少し黙った。どうやら慎重に言葉を選んでいる様子であった。彼女のその様子を男は見逃さなかった。 「君はとても頭の良い娘だ。その証拠に君は今まで重要な情報を一切オレを話していない。」男は彼女がどこの誰なのかも、名前も知らなかった。だがどうも彼女は男の事を知っていて、その事を頑なにごまかしているように見えたのだった。少し間をおいて彼女は口を開いた。 「私も今のあなたに会うのは初めてで、それにあなたの事はよく知らないわ。だからこうして色々とお話がしたかったの。」彼女は頬を赤らめながら話した。その様子は照れているようであったが、その照れは想いを寄せる人に対してのそれとは少し違う感じがしたのだ。そんなところにも男は違和感を覚えずにはいられないのであった。そして男は不信感はどんどんと彼女のその違和感に向かっていくのであった。     
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