拉致⑤

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拉致⑤

花の種の先には、人目につかないような倉庫があった。周りはもう薄暗い。どれ程時間がたったのかがわかる。灰の景色のなか、螺旋階段を上っていくと、子供の泣き叫ぶ声が聞こえた。陸だ!おもいっきりその名を呼んだ。さらに叫び声が大きくなった。もう、耐えられない。 バンッ! 「陸!」 そこには、男たちにつかまりひどい扱いをうけながらも、必死にもがいている陸の姿があった。目の焦点があってない故、ひどく衰弱しているのはまる分かりだ。 気づいたときには、俺の周りは殺人現場の一歩手前の有り様だった。多分全て俺がやったのだろう。だが、そんなことはお構いなしに、俺は陸の元へと歩み寄った。誰からみても怯えた表情。あの時外で待たせていなければ…と、後悔の念が渦巻く心を、自分でもおさえられなかった。
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