はじまり

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オレが生まれた近藤家では、まことしやかに受け継がれている話がある。   『運命の人に触れれば音が鳴る』   祖母曰く、「じいさんと初めて手を繋いだ時にカランと鳴った」   母曰く、「お父さんと初めて腕相撲した時にビー!!って警報音がした」   そしてついには、昨年結婚した兄までが…。   「香織と隣で肩が触れた時にブブブ!!って音がした」   にわかに信じ難い。   だが、当の相手である祖父や父、義姉までもが言うのだ。   「触れた瞬間に音がした」…と。   小さい時から聞かされていたオレは、そんなまさか…と思いつつも好きになった子に偶然を装い触れてみた。   鳴らない。   やっぱり…と、思いつつもこの子はオレの運命じゃないと線引きしてしまうと途端に興味が無くなったりもした。 なのに…。 いつもの通学中。満員電車の中。 揺られる15分の間に一度だけくる急カーブ。 「…あの」 突然声をかけられて、手すりをつかみ損ねる。 身体が倒れそうになったその時。 その人が、オレの手をグッと引っ張る。 カシャン──。 音が…した──。
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