青年

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向かいから三人の高校生たちがこれでもかというくらいの眩しい青春をまき散らしながら歩いてくる。太陽が夏の終わりに気付かず、まだ張り切って輝いている中、彼らの表情からはまとわりつく暑さの苦痛も、学校への不満や人間関係の諍いなど全く感じられなかった。  嫌だなぁ…  そんな高校生とすれ違うたび、青春とは程遠い生活をしている大学一年の僕の顔は磁石のように高校生とは反対の方向を向いてしまうのだ。後方からすれ違った高校生たちの笑い声が聞こえる。その笑い声に苛立ちながら、ニキビとニキビ跡で赤くただれた醜い顔をさらに歪ませながら、僕は歩いていく。  大学に着き、特に興味もない授業を受ける。周りの生徒は寝たり、携帯をいじったり、やりたい放題だ。  何してるんだ…この人たち いつからか、他人に対して苛立つようになった僕は、ちょっとしたことが気になる。淡々とした口調で注意することもなく授業を進める教授にも、イライラしている自分にすら憤りを感じていた。  そんなストレスの溜まる授業が終わり、僕は教室を後にした。そして、教室を一歩外に出ると、まるでお祭りがあるかのように、学内に溢れかえる人々と喧騒が目と耳を攻撃してくる。  うわ… この大学内では当たり前の光景も僕にとっては、とても耐えられるものではなかった。 「マジやばくない?」 「あははははは、本当にー?」  学生一人一人が、各々好きなことを友達と話しているのに、僕にはそれが苦痛で仕方がなかった。急いで、学内のトイレに避難する。  ふぅ… 誰もいない静けさと誰にも見られていないという安心が僕を落ち着かせてくれた。「お「昼休みだし、音楽でも聞きながら、勉強するか」 独り言を呟き、僕は自分の世界に入っていく。  
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