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だくだくと血が身内を駆け巡る音が頭の中にずっと響いている。そのうるさいほどの音が、兵たちの鬨の声によって一瞬かき消された。
那束は周囲を見やる。兵一同、殺気立った目で自分を見つめていた。
(ああ、獣の眼だ)
播埀国王家一族の首長の殿舎を目の前にして、獲物の首を早く欲しがっているのだ。
とめどなく噴き出す汗で視界が曇り、那束は額をぬぐった。乾いた汗とも泥ともつかないざらりとした感触に思わず掌を見やると、赤黒い血がへばりついていた。
ぎょっとして見やれば、掌ばかりでなく手甲までも真っ赤に染まっている。甲冑も下袴も血を浴びたように真っ赤だった。
そう。浴び続けていたのだ。敵兵どもの返り血を。
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