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パピヨン犬のチャンスは、ピンと立ったおおきな耳を持っていました。
ある秋の日、リビングでねむっていると、そのおおきな耳が、ご主人のお父さんとお母さんの話しているのを聞きました。
「ああ、寒くなってきた。明日にでも霜が降りて、公園のカエデが冬の合図をするだろうな」とお父さん。
「本当ね。ちかくで見ると、とっても楽しいのよね」とお母さん。
チャンスはこれを聞くとすぐに起き上がって伸びをして、おおきなあくびをひとつすると、うろうろリビングを歩きまわって考えました。
この犬は頭がいいので、人間のはなすむずかしい言葉や、長い話まではわかりませんでしたが、短い言葉ならその意味がわかりました。おおきな耳があるのでよく聞こえますしね。
「明日、公園、冬の合図、楽しい」
なのでチャンスは聞きとれた言葉でうんうんと考えましたが、やっぱりさっぱりわかりません。
そこでチャンスはくるっと体の向きを変えて、チャッチャッチャッチャッチャッ、と音を立てて歩き出しました。
「よし。ちびの主人に聞いてみよう」
チャンスはそう考えたのです。
なぜそう考えたのかといいますと、ふしぎなことですが、彼の言うちびの主人(彼の主人は四人いるのです。お父さん、お母さん。そしてその子どもの、彼が言うことには、おおきい主人のお兄ちゃん。そして、その弟の、彼が言うところのちびの主人です)とは、ちゃんとおはなしができるからでした。
と言っても、何日かに一回、すこしの間だけですけどね。
そして、その時は、おたがいになにか言いたいことがあるときに特にやってくるので、今回も、きっとおはなしできるはずだ、とチャンスは思ったのでした。
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