第1話 

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●2018年 編集ビル内   場所:怪談編集部の一室 登場人物:磯村      溶接マン (たくさんの紙が散らばる部屋の中が映し出されていく。資料の中には写真やイラストが あり、溶接マスクを被った怪人の姿が見える。絵巻物のような古いモノもあり、墨で書かれた絵の中には、同様の怪人の姿があった。ふいに部屋の明かりがつき、ワイシャツと ネクタイをピッタリ着こなし、メガネをかけた、やせ型の男“磯村”が室内に入ってくる。) オープニング  我々が歩く現代は“光”に満ちている。災害や戦争によってどれほどの喪失があるとし ても、人類は絶対にそれが損なわれる事のないよう、継続を維持し続ける。 光は明るく照らす物理的なモノだけではない。言葉や行動、思想でもいい。 様々な形をとって、人々の導き、生活を明るくするモノとして貢献している。ところで、 この光に人々が固執するのは何故か? それは“闇”を恐れるからだ。光ない時代に我々の祖先は死と隣合わせの恐怖を 常に味わっていた。体温の低下による死の直結、夜行性動物の襲撃。そうした出来事を 嫌というほど味わい“火”という存在を手に入れた人類は、しばらくの安息を 覚える事となる。 だが、彼等はすぐに満足を止め、その後の歴史や地球の進化速度で 表現すれば、“わずかな時間”で矢継ぎ早の進歩と発明を次々に提案、実行し、 早急かつ迅速な、現代の光に包まれた文明を確保してきた… もちろん、これらは人類が獲得した、他の種とは違う脳の発達、叡智の賜物と言えば それだけの話かもしれない… だが、疑問は残る… 人類が進化した理由は、そ・れ・だ・け・だったのだろうか? 彼等が恐れた闇は本当に動物から身を守る、環境の改善、発展を 目指したモノだけだったのか?原始人類、農耕民族、その後に続く時代、 更には現代…我々が闇に戦慄、狂気し、遭遇…見たモノは 何だったのか?何を恐れ、封じ込め、忘れるために光を求めたのか? 最後に加えておきたいのは、これはとても重要な事だが… 果たして本当に、“それらを根絶できたのか?” ここに一つの答えを提示できる。  
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