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「で、城田がどうかしたのか?」
さすがツボミは、聞き逃していなかったようだ。
沙羅が言いかけたことを、ちゃんと覚えていた。
沙羅は、
「うん、実はダーツバーのバイト仲間なんだけど、そこもずっと休んでるのよ」
「ダーツバー? メイドカフェはどうしたんだよ」
少し前、メイド服で一緒にバイトしたことがあるツボミに、
「じいさんが心配するからカフェは辞めたの」
沙羅はツボミが起こした事件とは関係ないと教えてやる。
ツボミと一緒に働いたはいいが、ツボミは一日でメイドカフェをクビになっている。
だから沙羅が、
「今は制服が格好いいダーツバーで働いてるの。キリッとしたバーテンダー姿なんだよ」
言ってやると、ツボミは、
「へぇ」
興味深そうに目を輝かせて、
「ところでダーツバーでも萌え萌えキュンとかやるのか」
「……」
いまいちわかっていない。
ツボミに付き合っていると話が進まないと思ったのか、
「どうせサボりでしょう」
優子が空になった弁当箱を片付けながら気だるげに口を挟んでくる。
「彼氏ともめてたのが、上手くいってリア充してるってことなんじゃないの」
確かに城田詠美は、普段の生活よりも彼氏を優先させるようなところがある。
日頃から学校もサボりがちだ。
だから中絶手術なんて噂もでるが、そんな事実はないことを、一緒に働いていた沙羅は知っている。
「でももう一週間になるのよ。あの子コスメ代でいつもピーピー言ってたのに、これ以上休むとバイトもクビになっちゃう」
貴重なJK時代、恋愛に費やすのもコスメ代につぎ込むのも個人の勝手だが、どうしても金銭に敏感な沙羅は気になってしょうがない。
それに城田詠美は、職場での仕事ぶりは真面目だった。
無断欠勤して平気な顔でいられる子ではない。
「この前、エステの会員権を買ったって言ってたんだよね。だから今はバイト辞められる状態じゃないと思うんだけどなぁ」
沙羅は先日、悪質なストーカー被害にあっているので、人間は少し間違えるだけで大きく歪むことを知っている。
城田詠美の彼氏を知らないだけに、何か妙なことに巻き込まれたのではないかと心配になるのだ。
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