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玉村は骨壺を手にしたまま、ゆるゆると頭をあげる。 そして骨壺ごしに見つけた。 「やっぱりここだったんだね」 つられて優子もそちらに炎を向けて、ようやく気づくことが出来る。 男がひとり、トンネルの端に頭を引っかけ線路に横たわるようにして倒れている。 まるで、死んでいるようにピクリとも動かない。 「――シンさん」 どうしてこんな場所にシンがいるのか。 何故、倒れたまま動かないのか。 玉村は、その場に立ちつくしたまま、シンの側に近づこうとはしない。 やはり、殺されることを警戒しているのか? 振り仰ぐ優子に、玉村は、 「シンさんがまだ生きてるか、見て来てくれる?」 小声で促した。 優子は、ライターの炎をかざしながら、一歩一歩シンに近づいていく。 優子が前に進めば、今度は後ろにいる玉村の方が闇に沈んでいく。 揺らめく炎の中にぼんやりと浮かんできたシンは、 「まだ、生きているのか――」 玉村がそう聞いたように、シンから漂ってくる濃い血の臭い。 強い死の臭い。 すると突如、 「焼け」 シンが口を開いた。 優子はビクリと身をすくませる。 シンは生きていた。 たがそう言ったきり、また動かなくなる。 スカートを整える体でしゃがみこんで、 「何を焼くの? ツボミには見せられないマニアックな本?」 笑えないジョークを口にしてみるが反応はない。 ただ優子の全身は汗でびっしょりだ。 いつシンの特殊警棒が飛んでくるかわからない。 しばらく待っていると、 「……違う」 シンはようやくボソリと続けた。 「俺を焼け。そして鴻上信芳を連れて帰れ」 優子は顔をしかめる。 「何言ってんの、鴻上信芳はあんたじゃないの」 「……俺は何者でもない」 出血のせいで意識が朦朧としているのか。 声に乱れはないが、シンの言う意味はわからない。 優子は、 「よくわかんないけど、まだ生きてるなら玉村さんを呼ぶわ。手を貸してもらわなきゃ」 シンを優子ひとりで担ぎ上げるのは無理だ。 玉村を振り返ろうとしたら、足を掴まれた。 「――よせ」 シンは言う。 「出来ないなら黙って帰れ。俺に構うな」
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