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『害虫がいくら死んでもニュースにもならないネ』
とは、ぽん太たちを指揮している情報屋のオヤジの談だが、真理だ。
これまでシンが殺して行方不明にされた人間は数多くいるが、ニュースになどなったことはない。
今シンが潰して回っているのは、女子高生を食い物にするヤカラたち。
その仕事はJKビジネスだけではなく、キャバクラやソープ、AVにまで及ぶ。
しかし、高校生を雇う方にも問題はあるが、雇われる方にもまったく問題がないかといえば、タマなどは首をひねる。
「最近の子は――」
なんて言葉を使うと、ツボミからオヤジ扱いされてしまうが、身の危険を考えずに安易にそういう仕事に飛び込む子どもは呆れるほど多い。
だからシンは、情報を得ると、乗り込んでいって潰す。
物理的に叩き潰す。
だから、この街に暮らす女子高生たちの治安は、他に比べて驚くほど良い。
全部、ツボミのためだ。
「危ないことには近づくな。うまい話には落とし穴があるって、シンさんがツボミに言って聞かせれば済む話だと思いますけどねぇ」
タマは服に飛んだ返り血を不愉快そうに拭うシンを見ながら呆れたように言う。
ツボミは口調こそ乱暴だが、言ってわからないほど聞き分けのない娘ではない。
だけどシンは、
「ダメだ、怖い」
「え?」
「ツボミを怒らせるのが怖い」
「……」
この最強最悪の殺し屋をもって、『怖い』なんて言わしめるツボミは、だがタマに言わせれば、どこにでもいる普通の女子高生だ。
ただ現在は少々、反抗期中だが。
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