コーハイ

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 廃校で荒廃した後輩が暴れている。  昨日は介護施設でご遺体を見た。  亡くなることが前提だから当たり前の光景ではある。  私が着任したときは意識不明で酸素ボンベをしていた。昔はレクリエーションに参加してたりしたらしく、先輩たちは泣いていたが半分死体の楡田さんだった為に涙は出なかった。  更衣室で着替えていると「ナンデナイテクレナイノ?」と楡田さんが窓の外に浮かんでいた。  エンバーミングもきっちりした。 「アァァァッ」って最後の声がする。ナースが言うには体内に蓄積されたガスが出るために声みたく聞こえるらしい。  亡くなる前に頸に切れ込みを入れて体液を排出してやる。遺体にオムツをする。 『無意味じゃないのか?』そんな心の声を楡田さんは聞いてしまったのかも知れない。 「俺を殺した奴を皆殺しにしてやる」   別に後輩はゾンビでも幽霊でもない。  人間だ。壮絶なイジメにあって精神が荒廃した。 「温度変化により声帯が震えるんだ、嘘言ってんじゃね!体からガスが出る?そんなことネットには書いてねぇ、ベテランナースなら当然知識はあるべさ?嘘は嫌いだ」  後輩はコンドームを指にハメて指人形にしている。マジックで目と鼻と口を書いた。 「コンニチワ」  コンドーム人形がしゃべった。
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