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「あ」
その瞬間、二人一緒に声を上げた。
さっきまで沙耶が立っていた場所に、白い液体状のものがボトリと落ちて来たのだ。
「うわ、間一髪じゃん」
詠太はホッと息を吐いて、沙耶の顔を振り向いた。沙耶は目を丸くして、地面にできた染みを凝視して固まっている。詠太は思わず笑ってしまった。
「よかったな、爆撃されなくて」
「ですね……あ」
沙耶は、そこでようやく我に返ったようにハッとした顔をし、深々と頭を下げた。
「あ、ありがとうございました。その、き、危険をお知らせくださって……助かりました」
「えっ? あ、いや……どういたしまして、だけど、さ」
詠太はバツが悪そうに頭をかいた。
クラスメイトにそんな風に仰々しく敬語使われるのが、ひどく居心地が悪かったのだ。
沙耶は頭を上げると、そのままくるりと踵を返して詠太に背を向けた。どうやら、詠太と会話を続ける気はさらさらないらしかった。
詠太はそっと息をついた。
嫌われているとは感じないが、さすがにこの態度はちょっとへこむ。
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