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 何とも言えない不安を胸に抱えながら家に着くとめずらしく寧々がいた。風呂上りらしく髪をタオルで拭いていた。明るいピンクのセミロングで、タオルの隙間からはラメの入ったピンクのネイルが見え隠れしている。 「ああ、お姉ちゃん、おかえり」 「ただいま・・・・・・今日は帰りが早いんだね」 「うん・・・・・今日は合コンがない日でさ。最近飲み疲れていたからちょうどいいわ」  私はコンパなど一度も行ったことはない。ドラマで見るだけの別世界の話だった。そのような生活に飽き飽きするほど浸かった人間が目の前にいた。私は押し寄せる脱力感を隠して「・・・・・そうなんだ」と相槌を打った。  朝が遅く帰りも大抵深夜になる寧々と私との日常の接点は僅かだったが、その僅かな瞬間ですら私には苦痛だった。中学の時に学年トップの成績を誇っていた自分が友香の意向によって進学を諦めさせられたのに対して、ろくに勉強もしなかった寧々が大学にまで行っていることが私にとっては一番認めたくない現実だったからだ。私立の俗に言うFランクの大学で勉強もせずにひらすら遊び続ける寧々に対して、勉強をしたくてもできる環境にいることが許されない私――このギャップを直視させられることが何よりも辛かった。  寧々との会話はそれ以上続くことなく、私はそそくさとキッチンへと入り、寧々は欠伸をしながら二階の自室に向かって階段を上っていった。
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