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「なに、あれ」
青々とした空には、大きな白いものが浮かんでいる。
雲じゃない。表面はつややかで規則的な曲線のかたち。
飛行機でもない。大きすぎるし、音もなく静止している。
「あれは・・・・・・お皿?」
そう、お皿。
UFO的な円盤じゃない。
よくパーティーで使うような大皿。
「なんでお皿が浮いてるのよ」
沙羅は茫然とするばかりだった。
「おや、まだ残っている人間がいたとはね」
突然、背後から声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには。
「・・・・・・」
ブロッコリーがいた。
ブロッコリーみたいな頭の人じゃない。
正真正銘のブロッコリー、だけど巨大、人間ほどの背丈がある。緑色の花芽の塊が、人間でいえば頭や手の位置にあって、薄緑色の茎でつながっている。下半分は一本の太い茎になっていて、地面の上に直立していた。
「ぶ、ブロッコリーの化け物!?」
「私は化け物ではありませんよ、お嬢さん。私は種族を代表する戦士であり、ルールを守る紳士です」
ブロッコリーは右手?を胸の部分に当て、お辞儀をするように頭?を下げた。
「さあ、一緒についてきてもらいましょうか」
「やだ、誰があんたみたいな野菜なんかと!」
「おやおや、強情なお嬢さんですね」
ブロッコリーは茎を曲げてジャンプし、沙羅に向かって飛んできた。
「い、いや!」
沙羅はブロッコリーを思い切り突き飛ばし、必死に走り出した。
「もう、なんなのよ! ゆ、夢!? 夢だよね!」
訳がわからず、沙羅は逃げ出す。
彼女はその時は気づいてはいなかった。
これが、魔の七日間のはじまりであることを。
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