目覚め

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 残された沙羅は肩を落として橋の欄干にもたれかかる。とりあえずどこかで身体を休めたかった。あたりを見回していて、級友の文香の家がこの近くだったのを思い出した。もしかしてまだ捕まっていないかも、わずかな期待を胸に彼女の家に向かってのろのろと歩き出した。  十分ほどで文香の家にたどり着く。残念ながら彼女の家も無人だった。沙羅はキッチンのダイニングテーブルに座りこんだ。カリフラワーの言った言葉を考えてみる。ブロッコリーには何か弱点があってそれを見つけたら倒せるみたいだ。どこの家にも有るけどもう無いかもしれないもの。考えても頭が痛くなるだけだった。コーラでも無いかと冷蔵庫を開けてみる。前に文香の家に遊びに来て一緒にお好み焼きを作ったのを思い出した。あの時も冷蔵庫を開けて材料や調味料を取り出した。キャベツに天かす、お好みソース……、そこまで思い出して、冷蔵庫の中身に違和感を持った。何かが足りない、あの時あった何かが無くなっている。たっぷり三十分考え続けた後、気がついた。そう、あれだ。文香の大好きな……。 「これが答なの?」  沙羅はつぶやいた。でもまだわからない、たまたま切れているだけかも。確かめなくっちゃ。  確認の場所として沙羅が選んだのは近くにあるスーパーだった。文香の家を出て、四方を見回しながら建物の陰に隠れて進む。五分ほどでたどり着き、中に入ろうとしたら自動ドアが開かなかった。 「しょうがないわね」  店の前に立ててあったセールののぼりを引き抜き、その下の円筒形の土台を持ち上げる。くるくると身体ごと回り、自動ドアに向けて手を放した。ガシャン、思ったより大きな音がして、ガラスに大きな穴が開いた。
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