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最後の演奏となった。
通常のライヴよりも一本分少なく、二本であった。
カップルたちの時間を奪わないため、と女性ボーカルの解説があり、笑いが起こる。
一回目よりもテンポがよく、ロックスタイルのクリスマス・ソングとともに、二回目ライヴの幕が開いた。
テンポの良いボサノバやジャズのアレンジだったりと、ノリの良いナンバーが続く。
ラストの曲が終わり、アンコール曲は、それまでと同じく奏汰のベース、タケルのアコースティック・ギターに、ドラム、女性ボーカルに加え、珍しく優のエレクトリック・ピアノを聴かせた『White Christmas』だ。
誰もが知るしっとりしとした名曲が、ジャズテイストの、洒落た洋楽風バラードとして送られた。
うっとりと演奏を聴きながら、美砂は、須藤を時々見つめていた。
それに気が付いていた須藤が、迷った後、テーブルの上の美砂の手に、そうっと、自分の手を重ねた。
美砂が、嬉しそうな顔になる。
須藤も、美砂の様子から、ホッとした表情になった。
曲が終わるまで、互いが気になる二人は、何度か目を合わせ、微笑み合っていた。
ライヴが終わると、二人は、ベースを片付けている奏汰に声をかけた。
「今日のライヴ、とっても楽しめたよ。ありがとう」
「知らせてくれて、ありがとうね」
奏汰は、これまでとどことなく雰囲気の違う須藤と美砂を前に、嬉しそうに言った。
「来てくれてありがとう! 俺も嬉しかった! またおいでよ、是非二人で」
奏汰は、心から喜んでいるような笑顔になっていた。
蓮華に挨拶すると、二人はバーを後にした。
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