Ⅲ.(2)兄弟

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 ある休日の午前中だった。  奏汰がコンビニに買い物に行っている間、アパートでは、蓮華がひとり留守番をしていた。  チャイムが鳴った。 「おかえりー。……あ」  蓮華がドアを開けると、知らない男が立っていた。  相手の男も、驚いた顔で彼女を見ている。 「あのう、ここは、蒼井奏汰の部屋では……?」  眼鏡をかけた、二〇代後半と思われるその男が、おそるおそる尋ねる。 「ええ、そうよ。奏汰くんのお客さん? 彼なら、ちょっとコンビニに行ってるだけで、もうすぐ帰るはずだから、どうぞ上がってお待ちになって」  蓮華はにこやかに、男を招き入れた。  男はきょろきょろと、部屋の中を見回した。  八畳ほどのワンルームには、ラグの上にローテーブルと、壁側にベッドがある。  小さい家具とテレビの他、スタンドにセットしたベースや、小さいアンプなどがある程度の殺風景な部屋だ。  蓮華が「コーヒーと紅茶、どちらがいいかしら?」と尋ねると、「ああ、すみません、コーヒーで」と答えた。  ローテーブルに、コーヒーが運ばれる。  蓮華は点いているテレビに見入ると、胡座(あぐら)をかいた。デニムのショートパンツの下に、黒いスパッツのスタイルではあった。  彼にしてみれば、ちょっと可愛いおねえさんだと思っていたのが、胡座をかき、せんべいをバリバリ食べながら、缶ビールをすすっている、奇妙な女に映ったことだろう。  見ている番組も、バラエティーである。  これでは、まるで……まるで━━! 「ただいまー。コンビニ行ったら、優さんに会ってさ」 「お邪魔するよ~」  と言いながら、にこにこと、奏汰に続いて優が入ってくる。 「奏汰っ!」  男が立ち上がると、奏汰が驚いた。 「兄貴! なんで、ここに?」
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