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「仕事以外の時間は気を抜いてたっていいだろ? 酒だって夕方からの仕事に差し支えないようたまに午前中に飲むくらいだし、そんなに強いモンは飲まないようにしてるんだし」
潤が目を丸くした。
「夕方から仕事ってことは、彼女、水商売か何かか?」
奏汰は迷ったが、観念して打ち明けた。
「バイト先のバーのママだよ。実は、皆には内緒で、……付き合ってる」
潤の顔色が、みるみる変わっていく。
「……ってことは上司? 職権乱用じゃないか!? パワハラか! ますます許し難い!」
「違うよ! 俺の方から、……なんだよ」
「お前はまだ子供だから、大人の女性が物珍しくて、知らず知らずのうちに誘惑されてただけなんだ。年上の女性、しかも、水商売の女が、お前なんか本気で相手にするわけないだろ? 奏汰、目を覚ませ。今すぐにとは言わない、早いうちに別れておけ」
奏汰は、ムッとした。
「なんで、そんなこと、兄貴に指図されなきゃならないんだよ?」
「俺も、ここに住むからだ」
「なにーっ!?」
潤は腕を組み、奏汰を見下す目になった。
「こっちでアパート探そうと思っていたが、母さんと同じく俺もお前が心配になった。だから、一緒に住んでやろう」
「威張って言うなよ! 俺は嫌だからな! だいたい、ここワンルームだぜ? 大の男が二人もなんて、無理に決まってるじゃないか!」
「俺はほとんど寝に帰るだけだから、問題ないだろ?」
「や・だ・ねっ!!」
奏汰と睨み合う潤は、おもむろに、スマートフォンを取り出した。
「もしもし、母さん? 奏汰が水商売の女と同棲━━」
「おい! やめろよっ!」
潤の電話は、つながっていなかった。
「口止めして欲しかったら、俺の言うことを聞け」
勝ち誇ったような潤の顔を、奏汰は睨みつけた。
「告げ口でも何でもすればいいだろ!」
ドアを乱暴に閉め、奏汰は部屋を出た。
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