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「今日、おいでよ」
従業員たちが帰った後の店内で、そう言った奏汰に、蓮華は首を横に振った。
「兄貴が何か言ったのか?」
奏汰が心配そうに、蓮華の顔を覗く。
「何も言わないわよ。お兄さん、奏汰くんのところに、しばらくいるつもりなんじゃない? スーツケース持ってたもん。あたしがいたら邪魔でしょ? 久しぶりなんだから、じっくり兄弟で話してみたら?」
「兄貴とは六歳離れてて、昔から気が合わないんだ。さっきだってケンカになっちゃったし……まあ、俺が一方的に怒ってたんだけど」
蓮華が、溜め息を吐いた。
「あたし、第一印象、相当悪かっただろうなぁ。バカよね、つい気を抜いてて……。奏汰くんにも、あたしのことでいろいろ言われて、いやな想いさせちゃうわね。ごめんね」
「そんなことないよ」
奏汰が、横から蓮華を抱きしめた。
「ほんのちょっとの間だけ、我慢しててくれる? 兄貴には早くアパート探させるから」
「うん」
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