第1章

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がくっ! 前のめりに眠っていたらしく肘が膝から滑り、身体が派手にビクついた。 ーやべ、マジ爆睡しちゃってたじゃん。 慌てて大輝は周囲を見回す。 「え…ここどこ?」 目覚めるとそこは、新幹線の中ではなく日が射す外だった。 「ちょ、いや何だ?え?俺、置いていかれた?」 あまりにびっくりして、声に出してわめきながらキョロキョロする。 自分が座っているのは木のベンチ。地面はコンクリート。立ち上がるとレールが見えた。単線らしく2本しかない。 「駅?駅にいるの俺…」 ーでもどう見ても、新幹線が止まるような駅ではない。皆はどこ行った? 駅と言ってもコンクリートむき出しのホームは屋根もない。ドラマとかで出てくるような田舎の無人駅みたいな…。みたいなというよりそのもの。景色を見渡しても典型的な何もない田舎、それ以外に表す言葉がなかった。目印なるような建物とかも一切無い。 スマホで誰かに連絡しようとポケットを探り思い出した。新幹線移動中に充電しておこうと充電器に接続し、手荷物用の鞄の中に入れた事を。鞄は、キャリーバッグの上に置いた記憶がある。 「あ、駅舎?」 誰かいるかもしれない、期待しながらホームの真ん中辺りにある駅舎へ行くが、やはりというか無人だった。 「それにしてもボロ、とは違うかレトロ?」 田舎の駅なんてこんなものなのかなと思うが、駅舎の作りもひび割れた窓もベンチも、古い映画のセットのようなレトロ感がある。 ーとにかく冷静になろう。 大輝は駅舎内のベンチに座り、今日の自分の行動を反芻する。 ー修学旅行初日、早朝出発だった。新幹線で広島駅へ向かう途中。広島に着いたらバス移動する予定になってた。 今日のスケジュールはどうだった?平和記念公園、原爆ドーム、資料館見学、確かそんな感じ。 そうだよ…こんなレトロな駅に来る予定なんかない…。
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