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ふと足音が聞こえて大輝は顔を上げた。おかっぱ髪の中学生くらいの女の子と目が合う。女の子はすぐに視線を逸らし、大輝から一番離れた場所に座った。
ーよ、よかったあ。第一村人発見だ。とにかくこの子に尋ねよう。
「あの、ちょっと聞きたい事あるんだけど」
言いながら大輝は女の子のそばに行く。女の子は露骨に怯える様に身体をビクつかせ、手荷物の風呂敷包をぎゅっと抑え込む。
ーそんなあからさまに怖がらなくても、襲ったりしねえ…つーか風呂敷包?それになに、そのダサいズボン…髪型も、一周回ってもダサくね?
周囲の状況も含めてあまりのレトロ感に、大輝は失礼だと自覚しつつ、つい女の子をまじまじ眺めてしまう。
「あ、あの…」
女の子が顔を真っ赤にして大輝をチラ見する。
「あ、ごめんごめん」
ー怯えるというより恥ずかしがってんのか…。男子と話すのが苦手な女子はいるしな。
大輝は一人納得して質問に移る。
「あの、ここ何駅かな?」
「え?」
そりゃえっ?ってなるだろうと大輝は思う。普通、何駅かわかってて来るよな。
「あ、ごめんね。俺東京で、土地勘無くて」
「ああ、疎開の方やろか」
「そかい?」
「ここは安芸飯室です」
「あきいむろ…」
聞いたこともない名前に大輝は不安を募らせ、重ねて聞く。
「住所は?あの、何県になるのかな?」
「広島県です。安佐郡飯室村」
ーとりあえず目的地の広島県内にいるんだ。いつ新幹線を降りた?訳がわからないが、連絡しよう。自分のスマホが無ければ連絡先がわからないけど、泊まるホテルの名前は覚えてる。親に念のためと言って聞かれたから。ホテルは検索すれば出て来るから電話して、恥ずいけどハグれたと言えば先生に連絡してくれるだろう。修学旅行生を泊めるホテルなら、引率教師の連絡先を聞いてるはず。
「悪いんだけどスマホ貸して」
「すまほ?すまほって何やろか?」
「え?いやだから、携帯のスマホ」
「けいたいのすまほ?」
「…スマホ、知らない?マジで?」
ー中学生くらいだろうから、持ってなくても不思議じゃない、でも、携帯を知らない人っているんだろうか?
大輝の周囲に携帯を知らないという人はいない。ばあちゃんも持ってる。芝居とも思えぬ女の子の言葉に、大輝は驚きを隠せず見つめてしまう。
女の子は更に頬を染めて言った。
「ご、ごめんなさい。田舎者で、と、東京で流行ってるもの?」
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