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「ゆきちゃん、お願いがある」
「何やろ?」
「今日から後にもし雨が降ったら、その雨には絶対に濡れないよう気をつけて」
「雨?」
「うん、特に黒い雨」
「やだあ、だいきさん、黒い雨なんて降らんやろ」
「うん、そうだったらいいんだけど」
「はあ…」
「約束して。黒い雨には触らない」
大輝は指切りをするように右手の小指を立てた。戸惑う雪子の右手を左手で掴み、上に上げさせる。
「指切りげんまん」
小指を絡めて、雪子の頬はまた赤く染まる。
大輝は駅舎の中の時計に目を向けた。
8時15分。
土地勘がないから、ここがどんな影響があるのかわからない。大輝は思わず目の前の雪子を抱き寄せた。
俺は、ゆきちゃんは、死ぬんだろうか?
「だ、だいきさん…」
大輝に抱きしめられて驚いた雪子が小さく声を上げた時、周囲の空気が、熱くなったように感じた。
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