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確かに細谷に言われるまで気にしたことはなかったが、そう言った話しをしたことがないわけではないが、どちらかと言うとないに等しかった。
遼太郎からの恋愛話はもちろん、お互いに好きな人の話しすらしなかったような気がする。
ずっと一緒にいたからだろうか。
照れくささや、もしかしたら家族に知られてしまうんではないだろうか、などと妙に勘ぐっていたのかもしれない。
しかし、ーーそれは遼太郎の場合のみの話しだ。
本人に聞いたわけではないので、あくまで浩介なりの考えでしかないが、浩介に至っては異性に対して意識が向かない、とはっきり気付いたのが中学生の頃の性の授業を学んだことがきっかけだったのを記憶している。
浩介のある種の感情は、異性に対してだけではなく、同性に対しても例外であった。
遼太郎だけにしか気持ちの幅が振れることがなかったからだ。
その気持ちは果たして家族愛というやつなのだろうか、と悩んだ時期もあったが、自分の "それ" はみなが普通に誰かしらに抱く「恋」という、やっかいなものに変わりはなかった。
だから、自然と「恋愛」というカテゴライズされた話しなどを避けていたかもしれない。
浩介はわざわざ自分から話したり、と振ったりと、とすることはしなかった。
なぜなら普通の恋心だと思っていた、"それ" が世間では普通という括りに当てはまらないからだった。
ただ、好きという気持ち抱いてしまった相手が、幼馴染の、自分と同じ性別なだけなのに。
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