真崎の場合

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とにかく今日は暑かった。 厳しい練習の最中、流れ出ては止まらない汗を袖で拭った。 まだ10時を回っていないというのに、この日差し。今年の夏はどこか異常なくらいの暑さが続いていて、それも部活に影響が出るほどだった。午後部が中止となってしまい、各々帰宅を命じられてしまったのだ。 みなが帰れることを喜んでいたが、浩介としては部活で時間を潰したかったのだが、そしてもってできれば、今日のコンパに参加しないですむようにしたかった。 しょうがないと足取り重く部室に戻り、ロッカーからタオルを取り出して首にかけ、顔全体の汗を拭き取った。 先に戻っていた遼太郎はすでに着替えをすませていたので、少しばかり急いてユニフォームを脱いで着替え始める。 帰り道も一緒なので、予定がない限りはほぼほぼ一緒に帰宅している。 「あ、りょーちゃん。はいっ」 思い出したようにスクールバックからペットボトルを取り出して、一気に3分の2ほど飲みきる。残った清涼飲料水を遼太郎に差し出すと、飲み口に口を付けた。その光景を気付かれないように盗み見た。思わず息をのむ。 「ほんとお前はしょうこりもなく。...足りねー」 「今日とくに暑いもんね」 慌てて視線を下に向けて、心を落ち着かせる。遼太郎からペットボトルを受け取り、その飲み口に触れたい衝動をぐっと抑えて、バックにしまった。ちゃんとゴミ箱に捨てよう。 「帰ってシャワーして~!」 「...ほんとにね」 そう言って先に部室を出た遼太郎の後を足早に追った浩介だった。
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