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第1章 五月雨
AM1?00
会社で残業を終え、帰宅しようと会社を出た。
「あー、そう言えば天気予報は夜から雨だったっけ」
バスで帰る選択肢もあったが入社と同時に一人暮らしを始めて少しでも節約しようと考えていた矢先であったため自宅まで歩いて帰ることにした。
自宅と会社の距離は徒歩で30分程度なので歩けない距離ではない。
自宅まで残り10分程度の所まで帰ってきた時、バス停のイスに一人の女性が座っていた。遠目で見た時はさほど気になりはしなかったのだが近づくにつれて女性が雨に濡れていることが分かった。
いつもなら少しの罪悪感と引き換えに通り過ぎてしまうのだろうがこの日は不思議とそういう気持ちにはならなかった。
「あの、服濡れてますけど大丈夫ですか?」
自然と足を止め声をかけていた。
女性は少しの間俯いていたがやがて顔を上げて、少しずつ会話をするようになった。
「ご心配おかけしてすみません。あまりこの辺りに詳しくないのでバスを待っていたのですが、、」
と女性はバスの時刻表に指を指した。
「ご、午前6時!?」
なんと、バスは既に最終まで運行しており、次に来るバスは5時間後であった。
この女性はそんな時間までここで待とうとしていたのか、と驚きのあまり声が裏返ってしまった。
ここで見過ごすことはさすがに無理があるというものだ。
「もし良かったらバスが来る時間までうちに来ますか?ここから10分程度なので」
「い、いえ、そこまでして頂く訳には、、」
「濡れて風邪でも引いたら、その方が罪悪感あるんでついてきてくださいね」
半ば強引な形にはなってしまったがその女性をバス停から何とか家まで連れてくることが出来た。
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