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3月まで学生だった人間が、社会人になったとて4月から使えるわけもなく、先輩に怒られたり、宥められたりしながら頑張ってる――らしい。
「へえ、そうなんですねぇ。私はそんなもの、受けなかったな」
「そっか、桜井は就職活動、しなかったもんな」
「ええ」
「ブリリアントファーマシーか。老舗の大企業だもんな。うちも桜井の会社の医薬品にお世話になっているよ」
「ありがとうございます」
桜井は大学卒業前から、今の会社の社長に気に入られてアルバイトのようなかたちで仕事をしていた。
学生時代に司法試験にも合格、司法修習を経て、ブリリアント社に入社した。
他の新人たちと足並み揃えてスタートを切ったわけではなかったので、新入社員が通るマニュアル通りの社員教育はすっとばしてきた。
桜井にとって社会人のスタートは、すべてがイレギュラーだったのだ。
その分、そんな話を聞くと、やけに新鮮に思えて、つい聞き入ってしまう。
「そんなわけで柳田も佐藤も毎日忙しいらしい。特に佐藤は救急救命センターにいるとかで、昼夜問わず休む間もないから、遊ぶ時間がないって泣いてた」
楠田が「そういえば」と身を乗り出してくる。
「桜井は新城の会社に入ったんだっけか。法務部だって言ってたっけな?」
「ええ」
「製薬会社の法務部って何をするところなんだ?」
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