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「専門的な分野もたくさんありますが、まあ端的に言えば、企業活動のアクセルとブレーキみたいなものです。どこの法務部でもおそらく同じでしょう。最近は細かいことに大変やかましくなっているので」
「へーえ。でもおまえ、いろんな法律事務所からスカウト来てなかったか?」
「来てましたよ」
「それでも新城の会社を取ったんだ?」
「ええ。そっちの方が面白そうだったので」
今の社長と一緒に出歩くことが多かったせいか、ブリリアント社の取引先企業などからたくさんのオファーがやってきたのは事実だ。
でも本当は綾樹のそばにいたくて、今の会社に入社した。
いずれ綾樹は社長になるし、会社も老舗の製薬会社だ。企業としての地盤も安定しているし、そう簡単に崩れることもない。
仮に崩れるとしたら、その時は綾樹と一緒だ。無論、会社が倒れないように、共に戦う覚悟もあるが。
「でも楠田君は実家のお店を継いだんでしょう。跡取りも大変なのではないですか? 将来は自分でかじ取りをしなきゃならないのだから、サラリーマンの私よりは責任が重そうだ」
桜井がコーヒーを飲みながら感慨深げに言うと、楠田は「まあな」と頭を掻いた。
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