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きちんと視力検査をしてもらった結果、今の眼鏡が合っていないことが判明した。毎日かけていたから気づかなかったが、そのせいで視神経はボケた分を調整しようと必死に働き、それに激務も手伝って首や肩まで影響が出たんだろうと話していた。
「仕事に一生懸命なのはいいけど、やっぱり疲れると仕事の質が落ちる。桜井もたまには鬼のいう事を聞くべきだな」
楠田がいうと、綾樹は「そうだろう、そうだろう?」うんうんと頷いていた。
――かくして1週間後。
今日は聡樹が休みだ。体調がすぐれないという。
そんなわけで、代理として綾樹が社長室で仕事をしている。
綾樹が注文した眼鏡が手元に届いたとのことで、社長室に呼び出され、桜井は今、綾樹の手でそれを掛けさせてもらったところだ。
自分で掛けると言ったのだが、綾樹が「よく見えていないのに落としたらどうする」と頑として聞かなかった。
冗談抜きで綾樹へのときめきが止まらない。
こんなふうに大切なお姫様のように扱われて、ずっとずっと閉じ込めていた片想いが綾樹へ向かって走り出そうとしている。
今の自分は普通に見えるだろうか。
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