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可能なら、本社の出荷担当と交渉して、自社が発売している頭痛鎮痛薬をダースで定期的に貰いたいくらいだ。
「桜井、ちょっといいか」
楠田はそういうと席を立ち、桜井の後ろに回った。
「楠田君?」
「桜井、ちょっと肩触るぞ。あー、こりゃひでえ。ガッチガチじゃないか。ちょっと揉んでやるよ」
「そんなに硬いですか」
「逆に聞きたいけど、おまえよくこれで我慢してるね。感心するよ」
楠田は言いながら、桜井の首や肩をほぐしていく。
「痛けりゃ言えよ。しかしまぁ、こんなに身体が疲れてるなんてな。新城の奴、相当おまえをこき使ってるな?」
「それなりに責任のあることを任されていますし、綾樹は副社長ですからね。将来はブリリアント社を背負う人ですから、仕事を完璧に覚えようと一生懸命ですよ」
「そっか、あいつ昔から妥協を許さない性格だったな。桜井は新城と一緒に仕事をしたことがあるのか?」
「綾樹よりは、綾樹のお父様、今の社長と行動を共にすることが多いですね」
「社長つきの弁護士か。なんかおまえかっこいいな、桜井」
桜井が何も言わなくても、楠田が一番つらいところを的確に指圧してくれるおかげで、首周りが温かくなり、すこしずつ肩が軽くなっていくのがわかる。
よく聞く「血の巡り」とはこういうことかと感心してしまう。
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