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ふと、先輩とキスしていた人を見ると、先輩と並んでもお似合いな美少女であった。
負けたって思った。とても綺麗な人でこの人も向日葵のような明るさのこぼれる笑顔を見せるから。一瞬にして負けたって思ったの。
先輩と彼女の仲を壊そうとしたわけではないけれど、悔しかった。でも、その悔しさも今日でおしまいにしよう。
あの後、先輩と少し話をして、別れの挨拶をした。そして、教室に帰ろうとした。しかし、私はすぐ、教室には帰れなかった。
授業をサボって、階段を上る。私は、屋上へ続く扉を開けた。それを閉めて、扉にもたれかかる。
見上げた空は快晴。どこまでも続く青空にまた涙が流れそうになる。
「もう、我慢しなくていいよね?」
ズルズルと崩れ落ちる体。私は地面に座り、声をひっそりとあげながら、泣いた。きっと、このポタポタと溢れ落ちる雫を見ているのは空だけだろう。これでいいの。先輩と先輩の彼女は二人は幸せそうだった。幸せに見えた。だから、これでいい。先輩が幸せでありますようにと願う。
「あれ? 泣いてるのに、先輩を思うなんて可笑しいな」
しゃくり声を上げながら、発した言葉に笑ってしまう。多分、くしゃくしゃの可愛くない笑みだと思う。
「これは、悲しいけどいい思い出でしょう。大好きでした、真先輩。あなたの幸せを願っています」
これで、最後。
先輩への恋心はここでおしまい。この恋は涙とともに流して、捨てた。
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