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出会は多目的教室の開かれた窓に寄り掛かるようにして立ち、教室内の後方のどこかをぼんやりと見つめていてそんな出会の後ろではあたたかな色をした夕日が春の空を焼いていた。
出会の後ろで空を焼いている夕日はあたたかな色をしているのに俺にどこか寂しさを感じさせた。
それはきっと出会の表情がどことなく寂しげだったからだ。
そんな出会に俺は声を掛けた。
『帰らないのか?』と、だけ・・・。
そして、俺はいつの間にか多目的教室に足を踏み入れていた。
それはまるで何か強い力に引かれたかのように無意識のうちに・・・。
「ゆっくり過ごそう。焦ることはないんだ」
俺は出会にそう告げて出会を抱きしめ直し、借りた浴衣から覗く出会の首筋にキスをし、ほんのりと残る痕を残していった。
焦ることはない・・・なんて嘘だ。
出会は焦るだろう。
俺と出会は期限付きの関係だ。
今年は一緒に居れても来年はわからない。
俺には移動がある。
「焦らなくてもいい関係に・・・なりたいです」
そう言って苦く笑んだ出会に俺は返す言葉がなかった。
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