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高校生。
「飛鳥ちゃ~ん!」
男子生徒の声にしては妙に甲高く、しかもどこか間の抜けたその声に呼び止められた出会 飛鳥は校門へ向かう角を曲がろとしていた足の動きを律儀に止め、その声の聞こえてきた方を振り返り、その先へと視線を向けていた。
飛鳥が視線を向けたその先には飛鳥と揃いのブレザーに身を包んだやや小柄な少年が居り、その少年は向日葵の花を思わせる眩しい笑みを満面に咲かせたまま飛鳥を目掛け、跳ねるようにして駆けてきていた。
飛鳥はそんな少年に柔らかな笑みを投げ返し、胸の前で小さく手を振ってその少年を立ち止まったそこで待っていた。
「おはよう、拓真。今日は寝坊しなかったんだ?」
飛鳥にそんなことを問われた間沼 拓真は一瞬だけ口元にイタズラめいた笑みを浮かべると駆けてきた勢いのまま飛鳥に抱きついた。
飛鳥は自分に抱きついてきた拓真をやんわりと抱きしめ返し、飛鳥に抱きしめ返された拓真はごく自然に『にしし!』と笑い声を漏らすと飛鳥から離れ『おはよう!』と元気な声を発した。
拓真のその挨拶を受け取った飛鳥は『おはよう』と拓真に挨拶を返し、改めて柔らかく笑んでいた。
「入学式の日に遅刻はマズイッて! 俺ももう高校生なんだしっ!」
そう言ってまた『にしし!』と笑った拓真に飛鳥は『そうだね』と返して微笑み、踵を返し新たな一歩を踏み出した。
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