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『新一年生の皆さん、ご入学、おめでとうございます』
そんなありきたりな言葉から挨拶をはじめた校長に九条は目もくれず、体育館の床に落ちた小さなホコリを睨むように・・・と、言うよりは睨め付け見ていた。
(ホコリが・・・)
九条はその小さなホコリが気になり、校長の話など聞く気にならずにいた。
元より校長の話など聞く気などなかったのだが・・・。
(式が終わったら捕まえよう・・・)
九条はそう心の内で決めると視線を床上のホコリからパイプ椅子に座った新一年生の群れへと変えていた。
(若い・・・)
九条が目を向けたその群れは当然のように若かった。
そこに居るのは15歳か16歳の子供・・・。
だから当然、若いのだが・・・。
だが、しかし、だ・・・。
それは『子供』と言うには少し大きく、『大人』と言うにはあどけなかった。
(高校生は『大人』で『子供』・・・か・・・)
九条はいつか教えられたその言葉をひっそりと思い出していた。
【高校生は『大人』で『子供』】
九条にそう教えたのは九条の隣で新一年生の群れを物色するかのように見ている英語教員の早川だった。
『高校生は『大人』で『子供』・・・。だからいいんだよ。だから可愛いだろ?』
当時、そんなことをヘラヘラ笑いながら話してきた早川に九条は目を細めただけで何も言い返しはしなかったが【『大人』で『子供』】と言うその言葉だけは九条もすんなりと受け入れれるものがあった。
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