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先生。
「出会くんはテスト、どうだった~?」
そう問い掛けて来てくれたのは右斜め前の席の野々宮 藍さんだった。
野々宮さんのその問いに俺は読んでいた文庫本から視線を上げ、いつもと変わらない笑みをなんとなくの理由で滲ませて優しく微笑み返してくれている野々宮さんにひっそりと心の内で謝っていた。
「ん~・・・まぁまぁ・・・かな?」
俺はそう返事を返し、開いたままにしていた文庫本に視線を戻してその会話から逃げようとしていた。
けれど、それを許してくれない声が上がってしまった。
『嘘を吐くなよ』と・・・。
そう声を発したのは執行 誉だった。
俺と執行は小学校が同じだったため、この高校での出会いがはじめましてではない。
けれど、執行との再会は小学校の卒業以来だった。
それでもお互いにすぐに誰だかわかったのは少し、おかしな気もした。
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