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(高校生は『大人』でも『子供』でもない。だから、難しい・・・)
九条はそう心の内で呟いて改めて新一年生の群れを見回した。
その群れの中に九条の目を引く一人の男子生徒がいた。
(あの髪色・・・地毛・・・か?)
九条が目を付けたその男子生徒の髪色は並んで座っている生徒たちとは比べるまでもないほどに違っていて浮いていた。
九条が目を付けたその男子生徒の髪色は明るい茶色をしていた。
もし、染髪をしているのならばそれは早くも校則違反だ。
九条は規律に厳しく、神経質な性格の上、そう言った校則違反を目の当たりにすると気になりだし、問い詰めずにはいられなくなると言う面倒な性格も持ち合わせているため一部の問題のある生徒たちからはひどく煙たがられているのだが、そんな生徒たちが九条を慕うこともあるのだから可笑しなものだ。
(・・・服装に乱れはなし)
九条は目を付けたその生徒の服装をそれとなく確認し、とりあえずはその髪色以外に問題がないことを認めると呼吸のような溜め息を吐き出した。
壇上に立った校長の話はまだ終わりそうになく、在校生の中には目を閉じてうつらうつらしはじめている者たちさえいた。
いつもの九条ならばそんな様子の生徒たちにピリピリしだすのだがなぜだか今日はその気が全くなく、九条の視線はまたいつの間にかその明るい髪色をした新一年生の男子生徒へと戻り、向いていた。
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