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新入生代表の挨拶を終え、席に戻った出会を九条は更に凝視していた。
名前を呼ばれて返事をし、壇上に移動して挨拶の前の礼を行った出会のその一連の動きは美しく、挨拶をはじめた出会のその落ち着きようはついこの間まで中学生だったとは思えないほどのものだった。
出会の口から紡がれるその挨拶の言葉は歌のようになだらかで短くも長くもないその挨拶を出会が終える頃にはまだその挨拶を聞いていたいとさえ思うほどの何かがあった。
そんな出会の挨拶を称賛する拍手の音は当然、大きかった。
誰もが出会を認めた・・・そう思えるほどに・・・。
そう・・・ただ、一人を除いて・・・。
九条はそんな模範生のような出会に言い様のない嫌悪感を覚え、目を細めていた。
嫌悪するのならば目をそらせばいいとわかっている九条だが、九条はなぜだか出会から視線をそらせずにいた。
それはまるで磁力のような見えない力に引っ張られているかのように・・・。
あるいは反発するかのように・・・。
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