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「・・・出会・・・ですか?」
九条は嫌々その名前を口にし、その名前を口にした口を濯ぐかのようにまたひっそりと溜め息を吐き出した。
そんな九条のことなど気にも掛けていない早川は『あ~! そうそう!』と嬉々とした声を上げて微笑み、その勢いのまま『挨拶、凄かったですねー!』と出会を褒め上げた。
そんな早川に九条は『そうですね』と気のない言葉を返し、先ほどまで出会が座っていた席へと視線を向けていた。
「・・・翔」
まだ職務中なのにも関わらず早川にそう名前を呼ばれた九条はあからまさに嫌な表情を浮かべ、そう呼び掛けてきた早川に『何?』と目だけで訊ね返し、早川からの返事を待っていた。
九条のことを『翔』と呼んだ早川のその声は本当に小さく、その声は隣に座っていた九条本人にしか届かないほどのものだったがそれでも九条は早川にそう呼ばれたことが嫌だった。
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