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「え? 嘘って?」
そう言って執行に視線を向けた野々宮さんの目は優しく輝いていた。
きっと野々宮さんは執行のことが好きなんだ。
そのことに気づいた俺はクイズに正解したかのような爽快感を得ていた。
「出会さ・・・返ってきたテスト、全部満点だろ?」
執行のその言葉に野々宮さんは『え?』と声を漏らし、野々宮さんを囲むようにしていた数人の女子生徒たちの口からは『すご~い!』なんて声が上がっていたけれど俺はただ、苦い笑みを滲ませることしかできずにいた。
そんな俺の様子を見て執行は薄い唇を微かに歪ませてみせた。
それはまるで罠に掛かった獲物を嘲笑するかのように・・・。
「ほら。図星だ。相変わらず優秀だな~。羨ましいや」
そう言ってクスクスと笑う執行に俺は『そんなことはないよ』と言って先ほど終えたばかりの数学のテストのことを思い出していた。
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