序章:まだ知らなかった恐怖

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この世界で頻尿となる人は、果たしてどれぐらいいるのだろうかーー。 意外にも、数は少なくないだろう。しかしその内訳となるとおそらくは高齢の方が大半を占め、若い人、ましてや女性となると、果たして何人いるであろうか。  16歳ぐらいまでは、私も普通の女子高生だった。しかし今思えば、陸上部であった中学生の頃から、その片鱗は既にあった。 なぜなら私は、中学校の保健の先生に対して、こう相談したのを明確に覚えているからだ。 「頻尿に悩んでいます」  その時の原因としては、陸上部生活が原因だったように思う。 800メートルをやっていた私はタイムトライアルの度に気合を入れる意味でお手洗いにいっていたものだから、それを体が覚えて、習慣化してしまったのかもしれない。 先生からアドバイスをもらい、この時は、それで改善した。 ただそれだけの話だが、先生は驚きもせず、当然笑いもせず、「よく相談してくれた」と、褒めるように言ってくれたのを今でもはっきりと覚えている。 先生は本当に、相談した私を褒めてくれたのだろう。体の変調を他者に訴える事の重要さを、さすがは保健の先生、よく知っていたのだ。 その事に、当時の私も気づいてはいた。 だがその真の意味と価値を実感するのは。大人になってからだった。
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