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――――と。
立ち上がろうとしてカサッと袋のような音を聞いた。
さっきから手に違和感があると思っていたが、クラッカーの袋が握られたままだ。
……食べていて寝たのだろうか。
頭がぼーっとしている。
そこへ、何かに気付いたのか、気まぐれなのか、同居人の、佳ノ宮まつりがやってきて、ぼくを、不思議そうにちらっと見る。
「……?」
手に持っていた袋を奪うように雑に持っていった。
そして自分の髪どめ、にしてはちょっと幼い子向けという感じの(めったに髪なんか結んでないが)うさぎさんのゴムを無言でくくりつけると、
袋を渡して、それでまた、奥へと消えていく。
あいつどうかしたのかなー、と、頭がぼーっとしていたぼくは、しばらく、ぼんやりと目線のみで見送っていた。
しばらくぼんやりしてから、慌ててもう一度消えかけた意識を、保つ。
礼さえ言えなかったと気付いたのは、周りに誰もいなくなってからだ。
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