捨てた少女《しょうねん》

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 自分が<男>だと自覚し始めたのは、いつ頃だっただろう。 幼稚園くらいのときか?もう、忘れてしまうくらい昔で小さい頃だ。 きっかけは小さい子供なら誰しもが思う、しごく簡単な疑問。 「男と女で、どうして区別されてるの?」 この頃は純粋にそう思っていただけで、親も小さな子供の戯言だと聞き流していた。  けど、思春期に入り大人の道を進んでいくにつれて、「どうして女は、こんなに弱く 見られるのが当たり前なんだ」と思い始めた。  その気持ちが積り重なって「女でいるだけで、差別される。こんな身体、嫌だ」と、 自分の性別を否定し始めた。  そしてあるとき、目が覚めたんだ。 ーーー『本当の自分』は...<男>なんだーーー  それからは、『本当の自分』になる為に生き方を変えた。 スカートや女っぽいアクセサリー。まだ『本当の自分』を自覚していなかった頃に、 周りの影響で少し買っていた、無駄に甘い匂いのする化粧品類。  <女>だと思われる物は全て捨てた。  そして微妙に長かった髪をバッサリ切り、指定の制服もセーラー服から学ランに。 胸にはサラシを巻き、ピアスも左につけ、オレは<男>になった。  完全に男になったはずなのに、周りからは軽蔑の目を向けられた。 [前はこんなんじゃなかったじゃん]、[女ならもっと女らしくしろよ] 向けられた視線も、言われている言葉の意味もわからなかった。  いや、だってさぁ... 「オレ、<男>だし」
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