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2話 大人の対応
* * *
時刻は、夜18時55分
「わわわ、遅刻しちゃう!」
浴衣に着替えた私は急いで、夏祭り会場へと向かった
だけど、浴衣っていつもと違って動きにくいし歩きにくいしにでもう大変
「あれって、黒炎君だよね?」
会場の入り口付近で、やたらイケメンオーラを放っている男の子がいた
しかも、よく見ると黒炎君は複数の女性に囲まれている
「ねぇ、君一人?」
「良かったら私たちと一緒に夏祭り楽しまない?」
少し遠くから見ている私は、ほんの少しだけ不安な気持ちになった
このまま黒炎君が、他の女の子たちと夏祭りに行ったらどうしようとか
どう考えても大人の女性だ。大学生くらいかな?
私なんか子供っぽい・・・よね
黒炎君は、高校2年になった今でも中学生に見えるくらいの童顔
だけど、普通に立っているとカッコいい顔をしている
喋ったらゲームのことしか話さないから、黙っていると本当にイケメンなんだけど
だから黒炎君は女の子にモテる
黒炎君、どうするの?
「君、いつまで黙ってるつもり?」
「もしかして、お姉さんたちにリードしてほしいとか? きゃ、可愛い」
「わかった。貴方、中学生でしょ? 初々しいわねー」
「・・・すみません。俺、彼女と待ち合わせしてるので。
あと、一つだけ訂正させてもらえますか? 俺は中学生じゃなくて、高校生です。
それに貴方たちにも待っている男友達がいるんじゃないですか?
ほら、あっちにいますよ」
「っ、わかったわよ」
「なによ、つれないわね」
「行きましょう」
そう言って、大学生ぐらいのお姉さんたちは去って行った
「あれ、朱里? 来てたのか」
黒炎君は私に気付き、こっちこっちと手を振る
「黒炎君! だ、大丈夫だった?」
「あー・・・もしかして、見てたのか?」
黒炎君は、“まさか見られてるなんて”といった表情で、恥ずかしくなったのか顔を逸らした
「見てた。見てた、けどまさか・・・あんな大人の対応が出来るなんて」
“むしろ、こっちが驚いたよ”と私は言葉を続けた
だって、本当に意外だったんだもん
ギャルゲーが趣味で、普段は子供っぽい黒炎君がまさかあんな対応をするなんて
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