意地っぱりな薬指

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まったく調子が良いんだから。 とまあ、彼の周りはいつもこんなふうだから、 私達の付き合いは秘密だ。 だって、バレたら私の身が危ないし、 無用なトラブルは避けたい。 こっそりと彼の姿を見送り、右手の薬指に光る 細身の指輪に視線を落とした。 これは二ヶ月前の誕生日に、隆司から 贈られたものだ。 彼が左手の薬指に付けてくれたのを、私が 右手に付け替えた。 隆司はそれが気に入らない様子だけれど、 何も言わない。 なぜ私だったんだろうと、今でも思う。 どんな美女や才女も選り取り見取りのあいつが、 気が強くて可愛げの無い私を恋人にしたがった のは。 ただ、付き合ってみると意外にもいろんな部分で 相性が良くて、その証拠に今まで大きな喧嘩も、 問題もなかった。 強いて言えば、最近のすれ違いくらいだろうか。 「はぁ……」 デートのことは諦めて仕事を再開したけれど、 どうも気分が乗らない。 今日こそはと思っていただけに、残念に 思わずにはいられなかった。 こんな調子じゃ、今日のノルマも終るかどうか。 そういえばさっき隆司から預かった仕事、 あれも確認しておかなくては。 再度依頼を読み返す私の目つきが、 鋭いものに変わっていく。 付箋の後に、別の指示があることに 気づいたからだ。
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