意地っぱりな薬指

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*** 「私……妊娠しているの」 その衝撃劇的な言葉が耳に入ってきたのは、 資料室にファイルを戻している最中の ことだった。 残っていた仕事と隆司からの依頼、その上 課長に頼まれた入力作業を終えたのは、 九時近く。 空きっ腹を抱えて片付けをしていると、 人の気配を感じた。 私と同じように、誰かが資料を戻しに 来たのだと、気にせずに作業を続けていた ところに、聞こえてきたのがこの衝撃の台詞。 びっくりして危うく持っていたファイルを 取り落とすところだった。 私がいることに気づいていないのか、 『誰か』の話は続く。 「今日病院に行ったの。三ヶ月だって。 ……ごめんなさい。迷惑をかけたくなかったの だけど、どうしようもなくて」 この時点で気づいた。 この声の主は、早退したはずの細谷さんでは ないだろうか。 そういえば、今日の早退の理由は体調不良。 不調の原因は妊娠のせいだったんだ。 それにしても、早退した彼女がなぜここに?
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