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そう思った途端に合点がいった。
私ったら、相当に動揺しているみたいだ。
答えは簡単。細谷さんのお腹の子の父親が、
うちの社員だから。
そういうことなら一刻も早くここから
退散したいのに、部屋を出ようにも
細谷さん達がドアの近くに居て、こっそり
部屋を出る方法がなかった。
そんな私の焦りも知らずに、今度は相手の
男性の声が聞こえ、私は更なる衝撃を受ける
ことになった。
「心配しないで。俺が責任を持ちます」
あれ、この声……?
聞き間違い、だよね?
けれど、私がこの声を間違えるはずがない。
それでも心のどこかで、間違いだと願う。
「御手洗君ごめんなさい。あなたにこんな
こと。でも私、心細くて……」
「細谷さん、大丈夫。俺に任せて」
私の疑念は確信に変わる。
驚きのあまりに声が出そうになったのを、
手で塞いで必死で堪えた。
御手洗なんて珍しい名前が、そうそう
いるはずがない。
それに、我が社にその名前の持ち主が
一人しかいないことを、私はよく知っている。
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