四十二代目女皇、御代

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「お姉様、行かないで、行ってはだめです……」 「ありがとう、与美(よみ)、でもね。私は行かねばいけない、そうしなければいけないの」  姉、御代(みよ)は、泣きじゃくる妹の額に手を乗せると、沈みきった表情に笑みを見せた。 「ごめんなさい、与美、貴女に迷惑をかけることになるかもしれない。こんな悪い姉を、許してくれとは言わない、でもこうせざる終えないの。ごめんね、与美」 「そんなこと、そんなこと、どうでもいいのです。お姉様はもう、帰ってこれないのかもしれないのですよ。私のことを気にしている場合じゃないです」  姉は、泣き崩れる妹を置いて、飛び出して行った。  降りしきる雨を、気にすることなく、走り抜けていく。  御代の頬を、矢がかすめる。  森の中を必死に駆け抜けていくが、大量に降り注ぐ雨を吸い込んだ、儀式用衣装は動きにくく、足を取られることもしばしば。 (もう逃げることも、かなわぬか)  覚悟を決め、立ち止まった御代は、敵を迎え撃つことにした。 「第四十二代目和締皇(わていおう)、御代と知っての狼藉(ろうぜき)か!」  御代の前に現れた数人の男達は、それぞれに武器を身構え、現れる。 「何も答えぬか、それとも無言のそれこそが、答えか」  その日、御代は女皇(じょおう)であり、和締皇(わていおう)という国の最高位に付くべく儀式を行っていた。和華彌締国(わかみていこく)と呼ばれる国の最高位は、常に女皇であり、世襲制(せしゅうせい)ではなく、選出されるのである。     御代は、女皇となるべき儀式を終えた所を、強襲されたのであった。 「相手になろう、かかってくるがよい」 ………… ……
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