四十二代目女皇、御代

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「目覚めたか、まぁ、無理はするな。といいたいところだが、それは大丈夫というか、できないだろうからな」  知らない男が目の前に居た。  御代は、起き上がろうと思ったが、全く体が動かない事に気づく。それどころか、感覚そのものが無い。 「あ、あの……」 「お前は、体の機能すべてを失った。起き上がることはおろか、痛みを含む感覚すらないはずだ。いや、すべてでは無いな、首から下のすべてだな」 「そうですか。あの、もしよろしければ、状況を教えて頂いてもよろしいでしょうか」 「ほう、驚きもせず、慌てることもない。さすがは、元女皇様だな」  元と呼ばれたことに、疑問を感じたも、状況が分からない今の状態では、拉致があかない。 「まず、一番知りたいであろうところから、教えていくか。お前は半年もの間、眠っていた。半年前、お前の即位式の強襲によって受けた傷によってな」 「は、半年!」  御代は初めて、悲鳴のような声を上げた。予想だにしない時間が経っていたのは、さすがに驚きを隠せなかった。 「お前は、死亡として処理され、妹が次期女皇として、四十三代目女皇に就任した」 「恵漸(けいぜん)は今、どうなっているのですか」  恵漸とは、和華彌締国(わかみていこく)、通称和締(わてい)の、首都であり、本来御代が統治するべき都であった。 「お前が犠牲になったおかげで、大きな被害はなかった。あの時辛うじて、奈紀呼(なきこ)を防ぎ、追い返したことで彼らの追撃も防いだ。しばらくは動くことはできぬだろう」  奈紀呼とは、かつての女皇の元で働く者達、巫女の一人であったが、故あって魔に魅入られ、力を得たために当時の二十三代女皇、弥依呼(みえこ)によって封印されたのであった。  巫女は、特別な力を有した女性達で、女皇が国々からそのような力を持った者達を集め、国の人々に助力するつとめをしている。  御代も妹である与美も、物心が付いたばかりで、孤児として生活していた所を、力を見初められ、母親同然のように接してくれた、先代であった四十一代目女皇、弥棲穂(みずほ)によって育てられたのである。
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