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少しだけ、名残惜しさを感じつつ受話器を置くと、何となく壁に貼られたカレンダーに視線が留まった。
今日の予定が殴り書きされた、その枠の日付は。
――三月二十日。
にわかに嫌な汗が全身からどっと溢れる。
たぶん。
殿町の津田さんで堕ろしていなければ、ちょうど今の彼女と同じくらいだったかもしれない。
気づけば部屋の中は、見慣れたいつもの朝になっていた。
でも、私の心は、未だあの、仄蒼い空間に取り残されたままだ。
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